週末図書館

予定の無い週末、本を読もう。

色のシャワーを浴びる(加藤昌治『考具』CCCメディアハウス)

働いているとよく同僚から「なんかいいアイディアない?」などと軽いテンションで聞かれることがある。冗談じゃない。いいアイディアをそんな簡単に教えてやるものか。そんなものは私が独り占めし、上司から褒められ、評価が上がり、出世街道まっしぐらなのである。 

そんな簡単に、良いアイディアは生まれない。アイディアマンに憧れる、そんな私でもよいアイディアがみるみる湧き出すような可能性に満ちた本が、今回紹介する『考具』である。

 

「考具」とは

我々人間は、日々、考えることでお金を得ている。地球上に生息する生き物の中で、思考する生き物がどれだけ存在するだろうか。答えは一種類、人類のみだ。たぶん。

会社に遅刻してしまう理由を考えたり、報告書の内容を考えたり、家に帰ればブログに何を書こうかと考えたりと、まあ人それぞれだろうが皆毎日あらゆることを考えながら生きている。

わたしたちは毎日何かアイデアを考え、企画にして、実行することで対価を得ているのです。(p.11)

でもどうやって考えれば良いのだろうか。ただただパソコンの前に座っているだけでは、アイディアは降ってきません。考える方法なんて、誰も教えてくれないのです。

ああ、考えるための道具があればいいのに……

考えるための道具、あります。 

 えっ?

考えるための道具、それを『考具』と呼んでみましょう。 

 なんですって?!?!!!?!

そう。「考具」とはえるための道のことだったのだ。

『考具』はあなたをアイデアに溢れた、企画型の人間にします。『考具』を手にすれば、あなたのアタマとカラダが「アイデアの貯蔵庫」「企画の工場」に変わります。(p.11)

今回は本書で紹介されている多くの「考具」中からひとつを紹介しよう。

それは「」だ。

色を、浴びるのだ。

バスといっても乗り物の方ではない。Bathだ。浴びるのだ。

やり方はいたって簡単。

朝、家をでるときに今日のラッキーカラーを決める。これだけ。

たったこれだけだが、効果は凄まじい。実際にやってみて感動した。

例えば赤に決めたとする。するとどうだろう。世の中にある全ての赤い物が、自然と目に飛び込んでくるではないか。いつも赤い郵便ポストは勿論のこと、道を走っている車、すれ違ったお姉さんが持っているカバン、電車でいつも座っている座席の色も赤だった。あと隣に座ったおばちゃんの髪の色も赤。ド○ルドかと思った。

 

この感覚、似ている。

クリスマスが近づくと、街のカップルが以上に目につくあの感覚に、似ている。

街に繰り出すカップルの数も普段と変わらないのだろう。赤色の物体の数も変わらないのだろう。私が独り身なのもいつもと変わらないはずなのに、この時だけは世界が違って見える。

その真髄

先ほど列挙した、「ポスト・カバン・座席・髪」のように一見関係なさそうなものたちが、街をぶらつくだけで色を起点として自然と集まってしまうことがカラーバスの魅力であり、不思議なところである。では集まった情報をどうするのかと言うと、組み合わせるのである。

「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」

これは『アイデアのつくり方』という本の中で提示された、「アイデア」の定義である。

カラーバスで手に入れたアイディアの要素を組み合わせていくことで、新しいアイディアを創出していく。

このように様々な可能性に満ちた「カラーバス」

さっそく街へ繰り出して、アイディアの素を探しに行こうではないか。

 

考具 ―考えるための道具、持っていますか?

考具 ―考えるための道具、持っていますか?